「私は今すぐ幸せになりたいのです」
その女性は「占いカウンセリング」が始まると、開口一番にそう言いました。年のころは30代の前半でしょうか。10年ほど前に結婚をしており、現在はご主人と子供の三人暮らしです。結婚当初はどこにもある「平穏な家庭」だったといいます。しかし数年前のご主人の「浮気」をきっかけに家庭の空気ががらりと変わったようです。
「こんな生活を続けるのは嫌なのです」「何か幸せにになる方法はありませんか」
その相談者は現在の煮え切れない生活を変えたがっていました。そこで私が何か良い方法を知っているのではないかと思い訪ねてきたようです。
「いま引っ越しをしようと思っています」「方位などを使い運命を変えられませんか」
以前の風水ブームでこのような相談が増えてきました。何か「神秘的な力」を使って運命を変えようと考えているようです。私は相談者の話を聞いたうえで、「基礎データ」を分析していきます。
結婚した時期をみていきました。結婚した当初は幼少期から続く平穏な周期の流れに乗り、「幸福な時期」が続いています。問題はその先でした。結婚して数年後、大きな「周期の変化」が起きています。その周期は女性にとっては「厳しい周期」でした。特に「愛情問題」が発生する否定的な「サイン」が出ています。つまり「ご主人の浮気」という現象は、その象徴的な運命のサインが「現実化したもの」といえるようです。
この時期にご主人が「浮気」をしたことは、「彼女の運命」の中にも書かれているのです。この時期に「愛情問題」が生じてくることを告げていました。
「大変残念ですが、すぐに運命を変える方法はありません」
それを聞くと女性はがっかりしたように肩を落としました。女性の関心の対象は「人間関係」に向かっていました。このようなタイプの女性は一番に「愛情面」を大切にするものです。それに気づいた私は言いました。
「あなたの本当の悩みはご主人のことではないですか?」
その女性はしばらく黙っていました。沈黙が続いた後に女性は言いました。「そうかもしれません」
この女性はなぜこのような「厳しい運命」を享受しなければならなかったのでしょうか。たしかにこの女性の運命には「愛情問題」に苛まれる暗示が出ています。もしご主人が「浮気」に走らなくても、別の形で「愛情的な問題」に悩まされたかもしれません。こうした運命の流れが彼女自身の運命を翻弄していました。
彼女のように「人間好き」で「愛情深い人」にとって、愛する人から裏切られることはどれほど辛いものでしょうか。生気のない無表情な彼女の顔がその深刻さを物語っていました。
「ご主人の浮気で何か思いあたることはありませんか?」
女性は困惑したような表情をしました。それはそうです。彼女がご主人の浮気の原因を知る由もありません。ただ彼女の運命に出ている「サイン」とご主人の現実的な一致は、単に偶然では片づけられないものもあるのです。
私の中にはある一つの「結論」が浮かんでいました。この「占いカウンセリング」で一番大事なポイントは、彼女の運命が偶然の流れで生じたものではなく、彼女の運命の中で何か「必然的」に起きる「愛情問題」があることを理解せねばなりません。
ではその「原因」は何かということが次に出てきます。彼女の「深層心理」のバランスをみると、愛情深い人であることが問題とは思えません。こうした深層心理の中で説明のつかないことの多くは、周期的の中で出現してくる前世のカルマであることが多いものです。
そこで彼女の「前世のカルマ」を分析しました。彼女の前世は「社交的」「活動的な人」であることがわかりました。また同時に「人間好きな人」でもあります。このあたりの情報は彼女の関心が人間関係に向けられていることでも説明がつくでしょう。彼女の前世はおそらく多くの人との「交流」があったのでしょう。現代でいえば社交的な「芸能人」のようなタイプの人です。明るく社交的で容姿にも恵まれた人生。多くの人から愛される、常に明るさに満ちた人生です。
多くの人はこうした明るく容姿に恵まれた人に憧れを抱くものです。ただ人目を引き付ける「明るい容姿」が、実際には多くの人を惑わす機会を作り出していることを理解せねばなりません。もしそのような人が「家庭」を持った場合、その「優れた容姿」は反対に「災いの種」になることもあるのです。こうした人は常に周囲の人から「言い寄られ」ます。明るく「きれいな容姿」と「明るい性格」が周囲の人を惑わすのです。どれだけの人がこうした「魅力」「誘惑」に打ち勝てるのでしょうか。
彼女の「前世」もそうした周囲の誘惑を断ち切れなかった人生ではなかったのでしょうか。もし彼女が結婚しているにも関わらず、そうした「誘惑」に勝てなかった場合、一番傷つくのは彼女の「配偶者」でしょう。彼女の過去の運命においてこのような流れが存在した可能性が高いのです。
もしそのような状況があった場合、その「心理情報」は消えてなくなるのではなく、その「心理情報」は彼女の「深層心理」の中に深く刻み込まれます。そして今度の人生では配偶者との立場を「交代」して「相手の気持ちを味わう」運命になるのです。
運命の世界はすべての人間の運命を「整合化させる」ように構造的に動いています。人間の「深層心理」の中には「運命の世界」と連動する大きな構造があるのです。すべての人はこの「運命の世界」と深く結びついており、それはたとえば大きな「巨木」と「葉っぱ」の関係のようなものです。
「葉一枚」は一見すると一枚一枚分離したように見えます。しかしそれは枝にしっかりと結びついており、必ず「全体」とつながっています。そして生きるための養分を「木全体」からもらっています。その養分であるエッセンスは「木全体」を循環しており、その葉っぱ一枚まで届けられます。
また、その反対にその「葉一枚」の情報ですら、その「木全体」に伝達されていきます。そしてその小さな情報は「木全体の情報」として処理され、再び小さな「葉一枚」にまで戻されて循環するのです。
「運命の世界」もこのような「巨木」と「葉」の関係にたとえられるでしょう。人間とはその世界に従属する一枚の「葉」のようなものです。そこから分離して「単独」で存在しているわけではありません。たしかな「運命法則」の下に全体の「一部」として生かされているに過ぎないのです。
「私にそんな世界の話はわかりません」「ただ私は幸せになりたいだけです」
相談者の女性は残念ながらこうした話を理解できないようでした。しかし彼女もいつかはこうした「運命の世界」を理解できる時が来るでしょう。
「すぐに幸せになりたい」と願う彼女の気持ちはよくわかります。ただ人がこうした大きな「運命機構」の中で生きていく以上、その法則性を無視した「個人の運命」というものは成り立たないのです。本当に幸せになりたければ「運命の世界」の中に自らを正しく「同調させる生き方」をせねばなりません。私たち人間はそこにつながる「心の世界」を奥深く探求し、自らの「命の糸」を正しく紡いでいかねばならないのです。それが真になされるときに、「本当の幸せ」というものが現れてくるのかもしれません。