引きこもりという試練

以前、中年のご夫妻が「琉球四柱推命」の「占いカウンセリング」を受けに来ました。2人とも50代くらいでしょうか。現在は夫婦共働きで生活しており、娘が一人いるとのことです。

相談はその娘さんのことでした。娘は20代ですがこれまで仕事をしたことがなく、学校を中退して以来、何年も「引きこもり」をしているとのことでした。「統合失調症」の兆候があるらしく、病院に通院しているとのこと。

「娘の運命はどうなっているのでしょうか」「なぜ何年も家に引きこもるのでしょうか」「娘の将来が心配です」

娘さんの「基礎データ」から彼女の「心理構造」をみてみます。全体的には「おとなしい感じの性格」です。生真面目なタイプであり、一見しただけでは引きこもりをするようには見えません。

「娘さんが引きこもりを始めたのはいつごろですか」「彼女はまじめな性格であり何の原因もなく引きこもりになるとは思えませんが」

すぐに反応したのは母親のほうでした。気丈そうな人であり、優しそうな父親と違って、はきはきと物を言うタイプの女性です。

「たしかに娘はとてもまじめな性格です」「引きこもりをはじめたのは高校2年生頃からです」「学校にも問い合わせをしましたが、はっきりとした原因はわかりませんでした」

高校2年生といえば多感な年ごろです。この時期の状態を知るために娘さんの「運命周期」の流れを読み込んでいきました。

娘さんの性格は一見するとおとなしい感じですが、潜在意識の内面には非常に「強い性格」が眠っています。その「強い性格」がちょうど高校2年生頃に意識(人格)の上に浮上してきていました。この潜在的な「強い性格」が意識の上に浮上してくると、反対に日常生活を営む「理性」の機能が衰弱し、常識的な考え方や規則正しい生活ができなくなります。学生であれば毎日の「学校生活」がとても「ストレス」に感じることでしょう。

「引きこもりの直接的な原因は彼女の潜在的な強い性格にあります」「非常に強い感情が日常の生活を困難にしています」

おそらくその夫婦は私の話を理解したようです。その当時の娘の変化をつぶさに見ているわけですから、話の内容が理解しやすかったのかもしれません。

「たしかに先生のおっしゃる通り、その頃を境に娘の性格は変わりました」「以前はおとなしい性格だったのにとても神経質で怖い感じに変わりました」「なぜ急に性格が変わったのでしょうか」

多くの人は人間の性格は生まれたときの「環境」や「遺伝子」で決まっており、生涯変わらないものだと考えています。ところがそうした事実はどこにもありません。それは単に「先入観」に過ぎないのです。人間の一生を詳細に観察すれば、人間の性格は「時間の流れ」と共に変化していくことが理解できるでしょう。それが人間の「運命の基礎」を作り出す「基礎構造」であり、どんな人もこうした「運命の構造」から逃れることはできないのです。

「お母さん、人間の運命は時間の変化と共に変わっていくものです」「それは性格や気質、体質なども例外ではありません」「もともと娘さんの性格の内面には気難しい性格がありました。それがその時期に現象化してきたのです」

その娘さんが「引きこもり」になったのは内面にある「気難しい性格」が浮上してきたために、実社会に溶け込めなくなったのでした。その「気難しい性格」は彼女の「前世」に起因する性格であり、こうした「負の性格」が現在の彼女の運命を厳しいものにしていました。

彼女の「理性機能」は潜在意識の干渉により一時的に「マヒ」しており、そのために社会に順応できなくなったのです。それは「一時的な現象」ですから、過行く時間の巡りで解消していくものです。しかしこうした「運命法則」を知らない親御さんにとっては深刻な問題です。なぜ自分の娘だけが「引きこもり」になり社会に出ていけないのか、もどかしさは積もるばかりでしょう。

「先生、娘のことはわかりました」「では、私たち親としては何をすればよいのでしょうか」

このような質問は家族としては当然のことでしょう。実際に似たような境遇にある家族から、ほとんど同じようなこうした質問を受けるのです。こうした「家族の問題」は簡単ではありません。人は「家族」という存在と深く結びついており、その「因果関係」は過去の非常に複雑な「要因」によって構成されているのです。

この家族の場合は「娘」のこうした運命的な境遇に「相応する」ようにして、ご両親の運命も同じような流れを形成していました。私はまず「父親」のほうの「基礎データ」に目を通しました。するとあることに気づきました。その娘の運命に相応するようにして、その父親の運命も大きく変化していたのです。父親の運命の中に「子供に関する愛情問題」が発生する「暗示」が出ていました。つまりその娘さんの心身の不調には父親にも関係する「秘められた意味」が存在することを表しているのです。

では母親のほうはどうでしょうか。母親のほうにも「愛情トラブル」が発生する「暗示」が出ています。時期も同じような時期に重なりあっていました。どうやら娘さんの問題は彼女一人だけの問題だけではなく、「両親の運命」とも深く関わり合っていると解釈せねばなりません。その「直接的な原因」を「生年月日時」の心理構造から探るには限界があります。というよりもその直接的な「原因」は見えるものではありません。

それは「犯罪行為」を立証する過程に似ているでしょう。「犯罪行為」を直接、目撃することはほとんど稀です。その多くは「現場」に残された「状況証拠」や「犯人の動機」から推測していくものです。時間をかけて多くの「物的な証拠」を積み上げ、「論理的」に検証していきます。そして「証拠」「動機」や「論理」が固まるってくると、実際には目撃していない「犯罪」でもありありとその状況を正確に「再現する」ことができます。運命の背後にある「因果関係」を探ることもそうした行為に似ているでしょう。

「心理構造の分析」やそのときの「時期的な変化」の状況を総合的に判断し、その人の運命の背後にある「因果関係」を解き明かしていきます。それは運命を知るうえで非常に「重要」なものになります。なぜなら多くの人が「自分」や「周囲の人」の運命を「曲解」して解釈しているからです。正しい「自己の運命」の意味を知れば、それが彼の運命を好転させていく材料になるのです。

「娘さんの問題は彼女一人のものではないようです」

私は「心理構造」から分析して推測した結果をご両親に伝えました。このような意味を一度で理解するには困難があります。それはそうした概念が事前に形成されていないからです。運命は「環境的なもの」や「遺伝的な要素」によって作られると多くの人は考えています。ただ運命の研究を通してわかったのは、そうした考え方がただの「先入観」に過ぎないということでした。

「私たち夫婦が何か悪いことしたのでしょうか」

父親の「心理構造」をみると非常に温厚な優しい人であり、彼が他人に対して何か悪いことをするようには見えません。父親の「基礎データ」を見ているうちに、あることに気づきました。「優しさ」の反動で「男性的な強さ」に欠けていました。それは父親の「相貌」にも出ていました。非常に穏やかで優しそうな表情ですが、どこか「強い資質」に欠けているのです。その原因らしきものがうっすらと見えてきました。

「お父さん、あなたが娘さんに対して直接に何かをしたというわけではないと思います」「ただご両親二人ともその苦しい運命のプロセスを通して何か学ぶことがあるようです」

父親のほうは「優しい性格」でしたが、その繊細さがか弱い「脆弱な人生」を形成していました。彼は異性の中に「母親の偶像」を見ており、彼の関心はその方向ばかりに向かっていました。その影響で子供に対する「関心」も薄くなっており、もしこうした「娘の事」件がなければ、彼がこうした問題に目を向けることはなかったでしょう。それは彼にとっては「偶像」から引き離すための試練だったのです。それを知らない彼にとっては「愛着するもの」から引き離される「苦しいプロセス」だったのかもしれません。実際に母親のほうは娘の引きこもり以来、人が変わったようになり、夫である彼に対しても「冷淡」になったのでした。

母親のほうにも娘と関わる原因が存在しました。彼女は生来かなり「享楽的な人」であり、人の苦痛や痛みに目を向けることの少ない度の過ぎた「ポジティブな人」でした。そうした性格が現実を「歪め」ていったのでしょう。娘の一件はそうした彼女の性格を「矯正する」にはまたとない機会でもあったのです。彼女はもともと愛情深い性格でもあり、娘のことであれば必ず「親身」になって面倒を見るでしょう。両親2人の運命は娘の運命と「シンクロ」して互いに苦しみながらも、共に成長していく「構造」になっていたのです。

「運命の世界」はこうした「家族の運命」を見事にシンクロさせて整合化していきます。これまでに何度このような「不思議な運命」を見てきたことでしょうか。それは実際に何度見ても「驚き」の連続です。自然の法則は人間の「心理構造」と深く絡み合いながら、人の「運命の軌跡」を生み出していきます。それは人間の理解をはるかに超えており、私たちは逃れようもないこの世界で「もがき苦しみながら」自らを成長させていくのでしょう。


 

 

2019年10月05日