華やかな「恋愛」ーそれは世の女性の誰もが憧れる世界です。小説や映画など「恋愛もの」は常に上位にランキングさせる売れ筋でもあります。それは現実には存在しない「虚構の世界」とわかっていながらも、なぜか私たちの心を魅了してしまうのです。
「琉球四柱推命」の「占いカウンセリング」においても女性の相談の多くは「恋愛」に関係するものです。「未婚者」の場合はいま恋愛している相手のことであり、あるいは「交際相手」がいつごろ現れるかという具合です。
「私、将来はきちんとした結婚ができるでしょうか。それが心配です」
こう話した女性はその外見に似合わない意外な質問をぶつけてきました。「色白」で透き通るような肌であり、「華奢」で「繊細」そうな体形は誰が見ても「美人」の容貌です。印象的で「大きな目」にくっきりと筋の通った鼻筋、綺麗にまとめられた髪は優美で「美しい」感じです。雰囲気全体にも独特な「オーラ」を放っており、男性であれば誰でも彼女の「手助け」をしたくなる、そんな雰囲気をもった女性でした。年のころは20代前半でしょうか。華やかさや美しさにかけては今がピークといった感じでした。
「結婚できない何か理由があるのですか?」少し失礼かと思いましたが率直に尋ねてみました。
「いえ、別に何か理由があるわけではありません。ただこれまで色々と嫌な事があったものですから」
彼女は過去の「嫌な出来事」に対して大きなコンプレックスを形成しているようでした。それが彼女の心の中に何か「わだかまり」を作り出しており、「結婚」に対してのアレルギー的な反応を生じさせているようでした。彼女の過去にどのような「不幸」があったのでしょうか。私は彼女の「基礎データ」を取り出しながら話を聞いていきます。
「よろしかったらそのことを話してくださいませんか」
私は自分で推測するよりも彼女に直接聞いた方が早いと思い聞いてみました。彼女はしばらく黙っていましたが、ようやく重い口を開きました。
「すみません、今は話したくありません」
彼女の心の中にはよほど嫌な記憶が刻み込まれているようですが、それを無理に聞くこともできません。私は再び彼女の「基礎データ」を分析していきました。
彼女の「心理構造」は特別に変わったものではありません。ただ全体的な印象としてかなり「享楽的」で「華やか」な性格であることがわかります。そうした潜在的な性格はたしかに彼女の華やかな外見に現れていました。
次に彼女の「潜在的な関心」の対象がどこに向かっているかを分析します。彼女の関心の多くは「異性」、つまり「恋愛対象」としての男性に向けられています。彼女の繊細そうな外見は、見事に彼女の関心の対象である恋愛に向けられた「心の様相」を体現していたのです。最初に感じたとおりの「心理構造」でした。それは深層心理の状態をそのまま「物質レベル」で再現していたのです。
「〇〇さん、あなたの心の中に異性に対する強い執着心があるようです。あなたの過去の嫌な出来事はそれに関連するものですか?」
私は彼女を刺激しないようにやんわりと尋ねました。彼女は少し驚いた表情をしましたが淡々と答えました。
「それもあります。でもそれだけではありません。他にもいろいろとありました」
彼女はそれだけ言うとまた黙ってしまいました。よほど過去の体験が「トラウマ」となって彼女を苦しめているようです。彼女はその理由を知りたがっていました。なぜ自分が恋愛で「辛い想い」をしなければならなかったのか、またそれに重なるようにして起きた一連の不幸は何が原因だったのか。
私はさらに彼女の「基礎データ」を読み込んでいきました。「心理構造」の分析で彼女の運命の基礎を知ることができます。「自我」の強さ、「感情」の働き方、「人間関係」「配偶者との縁」「親や子供との縁」「基本的な考え方」「潜在的な願望」など、過去の「カルマ」なども併せて総合的に分析していきます。
彼女の「心理構造」を一通り見てから、次に「運命周期」をみていきます。「周期の流れ」は時間と共に変化していく要素です。それは人の「性格」「気質」を変化させ、運命を変えていく「基礎」になります。
彼女の心理構造には特に大きな「障害」は出ていませんでした。だとすれば彼女の「不幸の原因」は「周期の変化」にあると思われます。そこで彼女の「周期変化」を幼少期から追っていきました。すると予想通りに「原因」らしきものを見つけることができました。
「あなたのこれまでの嫌な出来事はどうやら運命的な意味を持っているようです。たしかにそうした意味が出ています」
彼女は言いました。「運命的な意味ですか?それはどのようなものですか?」
彼女は私の言葉に少し動揺したようです。心なしか微かに声が震えているように聞こえました。
「あなたの心の中に非常に強い異性への思い入れがあります。それがあなたの心の中に強固なわだかまりを作り出しており、それが今回の運命的な傷害を生み出す直接的な原因を作り出していると思われます」
彼女の心の中に在る「異性」への羨望はとても強烈なものでした。その想いは彼女の人生の「大部分」を支配しており、それは「享楽的」な性格とあいまって彼女の運命を「翻弄」していたのです。
「先生、私が異性への思い入れが強いというのは認めます。でもそれがどうして運命を悪くするのですか、わかりません」
彼女のように「恋愛」に憧れている人はたくさんいるでしょう。「恋愛」がロマンス小説のようにうまく運び、幸せな運命を作り出すのであれば「何の問題」もありません。しかし現実の世界はもっと「複雑」です。「恋愛」とは言い換えれば人の運命の世界を動かす「偶像」であり、そこから派生する「諸々の運命」を展開させていく「力」となるものです。それは現実の男女を結び付けて、より複雑な「宇宙構造」を形成していく「力」でもあるのです。
「運命とは学びの過程です。しかしあなたは楽しいものや美しいもの、華やかなものに目を奪われて現実の運命を直視していません。運命の機構はそんなあなたに対して学び成長することを促しているのです」
これは「誇張」ではありません。彼女の「異性」への憧れ、「華やかなもの」や「美しいもの」に対するこだわりと「執着心」は彼女の「深層心理」の大部分を占めており、彼女の人間としての大きな成長はそのために「阻害」されていました。彼女の「深層心理」はこうした自分の運命を知っており、自分自身をさらに「成長させるため」にあえて彼女に「苦難の道のり」を歩ませたのです。
ただ、目の前にいる本人はそのことを全く知りません。それを知るのは彼女の「魂的」なもの、本当の意味での彼女の「本体」なのです。運命的な「受難」は彼女の深層心理が生み出した「運命の試練」だったのです。
「そうですか、でも自分で苦労を作り出していたなんて」
彼女は多少落ち込んでいるようにも見えました。すぐには自分の運命の「本当の姿」を知ることはできないかもしれません。ただ彼女は自らの心の中を見ることで「何か」を見出したのです。これまでまったく知らなかった「心の世界」に少し気づきはじめたのです。彼女はこれまで「不幸の原因」を他人のせいにしていました。なぜ自分ばかりに不幸が来るのか、外にばかりその「原因」を探していました。
「あなたはこれからもっと色んなことを学ばねばなりません。誰でも苦しみや悲しみ、人の嫌な面をみるのは辛いものです。しかしそうしたものも人の一部であり、それを避けて通ることはできません」
人生には様々な苦労があります。「事件」「事故」「病気」の苦しみ、「人間関係の不和」、ほかにも多数ある「苦労」を人は避けて通ることはできません。現代のような時代であれば「殺人事件」や「戦争」なども毎日のように聞くものです。それらの「行為」も人間の一部であり、これらが人間の「運命」の中に在る以上、それを学ばずに避けて通ることはできないのです。
「あなたは過去の辛い体験によって自らの弱点を克服してきました。今はその重要な意味が分からなくても、これから先にはこれまでの体験を超えていく時が訪れるでしょう」
「失恋」を何度も経験し、恋に焦がれながらもそれが果たせず、失意の中にいる彼女にはかなりきつい言葉だったかもしれません。「恋愛」という「偶像」は壊れてしまいました。しかしそれに代わる大きな「代償」を彼女は得たのです。それは彼女の享楽的で優美な「心理構造」を変化させていくでしょう。彼女の「深層心理」はより「普遍的な世界」へと向かいつつありました。次に語った彼女の言葉がそれを予感させました。
「私はいろんなものを失いました。でもそのことによって何か心のつかえがとれたような気がします。たしかに先生の言う通りかもしれません」
彼女はこれから先に大きく「普遍的な世界」へと前進していくことでしょう。「恋愛」の世界は華やかで美しくもあり、人を魅了する力を秘めているかもしれません。ただそれは「感情を支配する偶像」でもあり、自らの「心象イメージ」を膨らませて華やかに「飾り付けた世界」ともいえるのです。多くの人は自らが作り出す「心の偶像」を真剣に追いかけます。ところがそれはどんなに追いかけても追いつけない「心の影」なのです。
ある人はその「影」を現実世界の異性に見出して「理想」と「現実」の違いを知って「愕然」となります。またある人は最初からそうした「事実」を知っていて「フィクションの世界」で満足するかもしれません。いずれにせよ自らの「心の影」に固執してその世界にとどまる以上、その先には進めないでしょう。その先に実はもっと「素晴らしい世界」があることを知れば、きっと考え方も変えられるでしょう。
「あなたは貴重な経験をしてきましたね。それはあなたの偶像を破壊するためのプロセスだったのかもしれません。今後、未来により大きな幸福を見出すことができるでしょう」
彼女はかすかに微笑みました。最初みたときの繊細そうな印象はすでに消えていました。